複数の看護計画を立てた後、優先順位をつける必要があります。
ここでは、看護学生が課題や実習記録で使える、優先順位のつけ方の考え方を紹介します。
看護問題の書き方
看護問題は、基本「関連因子」と「診断名」のセットで表現します。
関連因子って何?
「関連因子」とは、「診断名」の誘因や原因となっているものです。
「関連因子」の部分が改善すれば問題も改善するだろうってことか!
「診断名」の誘因や原因となっている「関連因子」に 看護介入することで診断名に示された患者さんの問題を解決できるということです。
「関連因子」と「診断名」をつなぐには、「~に関連した」「~による」「〜に伴う」「~に起因する」などの表現を用います。
看護問題の例文
- 低栄養による創部感染・ 縫合不全のリスク
- 〇〇手術、ドレーン挿入、同一姿勢でいることによる疼痛
- 痰の粘稠度が高いこと、また疼痛が増強し排痰できないことに関連する呼吸器合併症の恐れ
- がんに罹患したことによる不安
<術後2日目>
この看護問題の優先順位を考えていきましょう!!
看護問題における適切な優先順位のつけ方
私も、優先順位を考えるのが苦手で、どうしたらいいものかよく悩んでおりましたが、
優先順位の考え方の法則(かせきじの法則)を考えてみました。
これを元に優先順位を考えていましたので、ぜひ参考にしてみてください。
ただ、必ずしもこの優先順位になるとは限りません。絶対この順番!というものは存在しないのです。
何が原因でどんな看護問題が生じているかによるからです。
同じ「#ストレス」という看護問題でも、患者さんによっては優先順位1位にも4位にもなりうるワケです!
そのため、看護診断(看護問題)の優先順位を考えるうえで大事なことは、
複数の看護問題について、なぜその優先順位にしようと思ったのか?という看護学生さん自身がしっかりと分析をしたということ、理由を挙げられるという事です!
一位、二位という順位が重要なんじゃなくてなぜ一位にしようと思ったか?という看護学生さん自身の判断が大事ってことです!
ニード階層論を使った優先順位のつけ方
また、優先順位を考えるときには、マズローのニード階層論をベースにすることが多いので、その手順をご紹介します!
ぜひ皆さんも一緒に考えてみてほしいので、時間があるときに以下を準備してください♪
<手元に用意するもの>
・自分が受け持ち患者について立てた看護問題の一覧
(いま実習中ではない場合は、学校で過去にやった事例を使ったり、過去にたてた看護問題があれば、それを手元に用意して練習してもOK!!)
・マズローのニードの階層の図
(教科書や、インターネットサイトにも記載されています)
優先順位を立てるステップ
(ステップ1)
マズローのニードの階層をみて、優先すべき欲求について確認する。
(ステップ2)
立てた看護問題を、生命を脅かすと思われる順に並べる
(ステップ3)
↑の(2)を、患者の安全、安楽を脅かすと思われる内容を考慮して並び替える
(ステップ4)
↑の(3)をさらに、患者自身がとくに解決を望んでいるものを考慮して並び替える
このステップに従って、立てた看護問題に優先順位をつけてみましょう。
マズローのニードの階層はテストにも頻出なのでこの機に暗記してしまいましょう!
マズローのニードの階層とは?
ニードの階層=人間の欲求を5段階に理論化したもので、
人間の欲求を高次から低次に分類したものです。
1 生理的欲求
生きていくために必要な、基本的・本能的な欲求
2 安全欲求
安心・安全な暮らしへの欲求
3 社会的欲求
友人や家庭、会社から受け入れられたい欲求
4 承認欲求
集団の中で高く評価されたい、自分の能力を認められたい、という欲求
5 自己実現の欲求
自分らしく生きていきたいという欲求
マズローは、
「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」
と仮定してこの説を提唱しました。
ヘンダーソンを看護理論として使っている学校はとても多いけど
マズローのニードとヘンダーソンの基本的ニードとの対応はこんな感じになっています。
マズロー | ヘンダーソン |
---|---|
生理的ニード | 基本的ニード1~8 |
安全のニード | 基本的ニード9 |
愛情と所属のニード | 基本的ニード10 |
自尊心のニード | 基本的ニード10~11 |
自己実現のニード | 基本的ニード12~14 |
看護問題の優先順位の根拠
- 低栄養による創部感染・ 縫合不全のリスク
- 〇〇手術、ドレーン挿入、同一姿勢でいることによる疼痛
- 痰の粘稠度が高いこと、また疼痛が増強し排痰できないことに関連する呼吸器合併症の恐れ
- がんに罹患したことによる不安
<術後2日目>
この場合の優先順位を考えてみます。
優先順位1位
〇〇手術、ドレーン挿入、同一姿勢でいることによる疼痛
まず1、3は今は起きていないけど、今後起きるかもしれない問題で、2,4は実在している問題ですね。
実在する問題であり、疼痛の問題を解決することで離床を促進し、かつ3の解決にもつながる可能性がありますね。そのため、優先順位1位とします。
ある問題を解決することで他の看護問題の解決につながることもあります。問題同士の関連も考慮して優先順位を考えてみましょう。
優先順位第2位
痰の粘稠度が高いこと、また疼痛が増強し排痰できないことに関連する呼吸器合併症の恐れ
痰の粘性が高いことと同時に疼痛が増強することにより、排痰ができない状態です。そして、痰が貯留すれば、無気肺, 肺炎などの呼吸器合併症のリスクが高まります。
呼吸器合併症となった場合、低酸素血症へとつながり生命や創傷治癒にも影響することが考えられます。 疼痛コントロールをしながら排痰をしやすくすることで、合併症を予防できるため、優先順位第二位とします。
優先順位第3位
低栄養による創部感染・ 縫合不全のリスク
低栄養状態は、易感染状態となり、創部感染や縫合不全を起こしやすくなります。回復が遅延する恐れがあるため優先順位3位とします。
優先順位第4位
がんに罹患したことによる不安
がんに罹患したことによる不安は、その不安が手術でがんを取り除いたことでどの程度心理的負荷が軽減されたかをアセスメントする必要があり、患者の精神的負担を考慮する必要がありますが、手術後2日目の段階では他のリスクや問題に比べて優先度はやや低いと考えられます。
そのため、まずは身体的な問題を解決していく必要があり、優先順位4位とします。
看護問題の優先順位をつける時に気を付けるポイント
一度決めた順位でも定期的に見直すこと
よく、最初に決めた優先順位のまま、実習期間ずーっと同じになってしまって
指摘するまで気づかない看護学生さんがいます。
優先順位を決めた時はその問題が一番でも、
患者の状態や入院経過によって、優先順位は変わるもの。
何が一番優先順位が高くなるのか、常に、いまの順位のままでいいのか
患者さんの状態をアセスメントしながら、並び替えることも視野に入れて看護計画を施行していきましょう♪
患者本人の気持ちを取り入れる事
↑の手順通りにしっかり、欲求を考えることで、順位を決める事ができます。
ただ、それだと、理論上の話になってしまい、患者さんの個別性が出なくなってしまう。
もちろん生命に直結することは優先順位が高くなるんだけど、
患者さんが自分らしく生活するためには、
患者が何を大切にしていて、何がいま満たされていないのか?
患者さん自身のお話も伺って、優先順位を決めることも大事です
治療方針や家族の意見も取り入れること
看護学生さんに求めることとしては、なかなか難しいかもしれないんだけど、ぜひ頭の片隅にいれておいてほしい。
現場で働くナースたちは、日々看護計画を立てますが、
欲求の段階、患者本人の意見、考えを考慮するだけでなく、
医師の治療方針、そして患者のご家族の意見や考え、これらも考慮して
優先順位を決め、日々入れ替えて、看護計画を施行しています。
看護実習中に患者のご家族とお話する機会があれば、その時にご家族の意向も確認してみましょう。
どうしてもうまく優先順位が立てられない場合
ここで説明したやり方で、うまく優先順位が決められない場合、
まずは、患者さんの目指す到達点を考えてから優先順位を決めるという逆算する方法もあります。
逆算して優先順位を決めるやり方ステップ
①患者さん、ご家族と到達点を話し合う
実際に、患者さんと接するときに、患者さん自身がどこを目指していきたいか。を話し合う。
②到達点を妨げている問題はどれかを決める
目指すべき到達点までに衝突する看護問題はどれか?を考える。
③最も根本的な問題から順位をつけていく
優先順位は流動的なもの
優先順位を決めるのが苦手な看護学生は沢山います。
特に急性期は、患者の容態が日々刻々と変化し、非常に難しいですよね。
このページに書いた方法で、
まずは暫定的に順位を決めて、また患者の言葉、容態の変化を見ながら流動性をもたせて変化させていく。
そんな感じで捉えてみてください