嚥下障害とは
嚥下障害とは、加齢や病気によって飲み込む力が低下した状態のことです。適切な治療を行わないと、栄養失調や肺炎や窒息に至ることもある。
嚥下障害には以下のようなリスクがある。
- 誤嚥性肺炎
誤嚥とは、食物、液体、唾液などが気道に入り、口腔内の細菌によって肺炎を起こす状態である。日本人の死因の第6位で、特に高齢者に多い。 - QOLの低下
口から食べることは生きる力の象徴であるため、嚥下障害による口から食べることが困難になることで患者のQOLを大きく低下することがある - 低栄養
嚥下障害によって栄養密度の低い嚥下調整食を食べることで低栄養のリスクがある。また、低栄養状態が続くと筋力が低下し、嚥下に必要な力が低下するため、嚥下障害を起こしやすくなる。 - 窒息
誤嚥した食物が気道に詰まることによって窒息するリスクがある。
看護計画
OP
- 誤嚥性肺炎の徴候の有無
- (胸部X線、発熱、肺音異常、倦怠感など)
- 食事摂取量、摂取時間、摂取速度
- 咀嚼・嚥下状態、むせこみがないか
- 食事中の呼吸状態(呼吸数、脈拍、声の変化、、必要に応じてSpO2)
- 食事の種類と摂取状況の関係
- 食事中の姿勢
- 食事中の集中力、食事への興味
- 疲労状態
- 義歯の状態
- 口腔内の食物残渣
- 栄養状態(体重、BMI、TP、Alb)
- 脱水状態(水分摂取、皮膚・粘膜の乾燥、発熱、疲労など)
TP
- 食事形態の工夫(とろみ剤の導入など)をする。
お茶や味噌汁などの液体を飲みやすくするために対象者に適した粘度に調整し、食事形態は管理栄養士などと調整し、嚥下機能を考慮した形態(大きさ、硬さ、厚さなど)で食事が提供できるようにする。また、嚥下調整食は栄養密度が低いため、必要に応じて栄養補助食品を活用する。 - 患者の体位を調整する
ベッドで食事をする患者さんの場合、仰臥位30°で頸部をやや前屈させた姿勢(頸部屈曲位)にする。
座位がとれない場合、胃食道逆流を防ぐためセミファーラー位をとる。 - 嚥下訓練
食前の嚥下体操、アイスマッサージ、息止め嚥下など、嚥下機能向上のための訓練を行う。肺炎予防のためには、食前の口腔ケアも重要である。 - 食事動作を容易にする工夫(片手でつかみやすい食器の使用、滑り止めマットの使用など)
- 毎食後の口腔ケアを実施し、口腔内に残留物がないか確認する。患者の自立度に合わせて介助する。
食事形態の変更を行う時は
食事はまず口の中で咀嚼され、食塊となり、喉の奥に送り込まれます。
これらの過程のどの部分で困難が生じるかを注意深く観察し、適切な形態の食事を選択する必要があります。
形態の特徴 | 適している患者 | 避けるべき患者 | |
---|---|---|---|
きざみ | 刻んだ食事 | 咀嚼力が弱い 開口障害がある | 唾液が少ない 入れ歯使用中 |
ミキサー | 液体状の食事 | 嚥下機能が低下 | 食塊の形成が難しい |
ソフト | 茹でるなどして柔らかくした食事 | 咀嚼力が弱い 食塊の形成が難しい 嚥下機能が低下 | |
嚥下食 | 柔らかくしたものをミキサーでペースト状にした食事 | 嚥下機能が低下 | |
流動食 | 液状のおかゆや重湯 | 術後 消化器疾患 | 低栄養がある |
EP
- 誤嚥を防ぐために食事に集中し、良い姿勢を保つことの大切さを説明する。
- 誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアの重要性を伝える。
- 基本的嚥下訓練の重要性と方法を伝え、一緒に実施する。
- 食事形態や調理方法の指導
とろみ剤の使用など、家庭で実践できる工夫など、日常生活における誤嚥予防の指導を行う。(一度に口に入れる量、食事時の姿勢など)
座位がとれる患者の食事介助
- 頸部屈曲姿勢とする。
- 深く腰掛けている。
- 体が傾かないようにクッシンなどで調整
- テーブルは肘が自然に机につく高さ
- 足の裏がしっかり床につくように調節している
座位がとれない患者の食事介助
胃食道逆流予防のポイント
- 患者が覚醒していることを確認する。
- 頸部前屈姿勢とする。
- 膝の下や足の裏にクッションを入れるなどしてずり落ちないように調整する。
- 腕の支えは、丸めたバスタオルを入れて調整する。腕を支えられることで首の緊張がほぐれ、飲み込みやすくなる。
- 食事終了後も20分程度はギャッチアップのまま。